人生の活力は物欲なり

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なんの捻りもないが、きちんと面白い良作--「オケ老人!」

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 「杏の初主演映画!」と聞いて是非観に行こうと思っていたら、何故か松山地区では全国公開初日の11月11日にはどこの映画館でも掛かっていなかった作品。少し遅れて松山でも1館だけで公開となったので、公開2日目に見に行った。(見たのは少し前になる。感動をまとめるのに時間がかかりすぎだ。反省)


「オケ老人!」予告編

 松山では1館だけって事もあってか30人程度は入っていた。前に書いた「RANMARU 神の舌を持つ男」よりも、こっちをメジャーに公開した方が良かったのでは?と思わせる入り。観客の年齢層はやや高めの印象。

 勘違いで老人ばかりのオーケストラに入ってしまった主人公の杏が悪戦苦闘しながらダメな組織を再生して行くという非常にありふれたパターンの映画だが、芸達者な出演者と手堅い演出で、思った以上に面白かった。

 ちなみに、杏は地方(足利市?)の高校教師だが、別に完璧な人間ではなくて、勘違いして入ったオーケストラも頼まれるとすぐには辞められないし、本来の志望である「梅フィル」にも入団して二股を掛けたり、割と等身大の描かれ方をしている。

 ここら辺「花咲舞が黙ってない」でもそうだが、杏って、スタイルもルックスも(女優としての血筋も)申し分なくハイレベルなのに、等身大で庶民的な女性を嫌みなく演じる事ができて、なかなか貴重な存在だと思う。

 ストーリーとしてはありふれていると言っても、「老人」をテーマにした映画であり、「老人には何が起こるかわからないから面白いんだよ」と言っていた(あまり見たことのない俳優が演じている)男性が、次のシーンでは死んでいるという老人ならではのギャグとか、多少ボケていて水道の蛇口を閉め忘れる老女の描写が後半の「緊張して蛇口を閉め忘れる杏」に繋がったり、いろいろと考えさせられるシーンもあった。

 それ以外にも、杏が「梅フィル」に向けて練習するために、かなり高価で大きな「防音室」をネットで買う下りとか、買ったものの部屋に収納するのに苦労してベッドに行くのにも苦労する状態になる下りが面白くて思わず笑ってしまった。

 館内にも、暖かい笑い声が続いていた。

 それ以外にも、先生なのに恋のことでは経験豊富な(?)生徒に教えを請うと言う関係の杏と生徒(黒島結菜)の距離感とか、胃が痛くなりそうな緊張感が伝わるライバル団体「梅フィル」の入団テストに向けての杏の練習シーンを通じて描く「音楽として間違っている」事の表現とか、見どころが多かった。

 全体的になんのひねりも意外性もないとしても、脚本と演出がきちんとまとまっていて出演者がちゃんと演じていれば、水準以上に面白い映画ができるって事がわかった。

 それと、この映画を見て始めて星野源と坂口健太郎が別の人だと気付いた。

 「星野源って、歌も売れてエッセーも書けて、『とと姉ちゃん』の彼氏も演じて、『逃げ恥』や『真田丸』にも出て。2016年大活躍だな」と思っていたが、『とと姉ちゃん』の彼氏の役名が「星野さん」だったから余計にこんがらがっていたらしい。